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集合住宅空調設計事例:東京 80m² マンション

東京都内の80m²マンションを対象に、HVAC計算ツールを使って暖房負荷計算、ダクトサイジング、放熱器選定を行う設計事例。SHASE基準準拠。

1. プロジェクト概要

本ケーススタディでは、東京都世田谷区に所在する3LDKマンション(専有面積80 m²、鉄筋コンクリート造、6階建ての3階部分)を対象に、暖房負荷計算から放熱器選定、ダクトサイジングまでの一貫した設計プロセスを解説します。設計基準は空気調和・衛生工学会規格SHASE-S 101「住宅用暖房負荷計算法」に準拠します。

東京の冬季暖房設計用室外温度はSHASE-S 101により0 °C(寒冷地を除く東京標準)、室内設計温度は居室20 °C、水周り22 °C、廊下・収納18 °Cと設定します。外壁はRC造150 mm+内断熱50 mm(押出法ポリスチレンフォーム)、総合熱貫流率U = 0.53 W/(m²·K)。窓はペアLow-Eガラス(アルゴン封入)でU = 1.8 W/(m²·K)、サッシは樹脂枠を採用します。気密性能はC値1.0 cm²/m²相当(相当隙間面積)を見込みます。

間取りはLDK(25 m²、南向きバルコニー面)、洋室A(10 m²、南向き)、洋室B(10 m²、北向き)、洋室C(8 m²、東向き)、廊下・玄関(12 m²)、浴室(5 m²)、洗面所・トイレ(5 m²)、収納(5 m²)で構成されます。暖房方式は温水パネルラジエーター+ガス給湯暖房用熱源機を採用します。

2. ステップ1:暖房負荷計算

暖房負荷計算はSHASE-S 101の詳細法に従い、室ごとに外壁・窓・床・天井からの熱損失と換気による熱損失を積み上げます。オンラインツール hvaccalcpro 暖房負荷計算機 を使用して計算を自動化できます。

LDK(25 m²、南向き)の計算例:

各居室の暖房負荷まとめ:

住戸合計暖房負荷:620 + 310 + 380 + 280 + 200 + 180 + 120 = 2,090 W。余裕を見て2,200 W(約7,500 BTU/h)を設計用暖房負荷とします。単位面積当たりの暖房負荷は2,200 ÷ 80 = 27.5 W/m²、東京のマンションとしては標準的な値です。

3. ステップ2:放熱器選定

温水パネルラジエーターを採用します。設計温水温度は給湯暖房用熱源機の標準仕様に合わせて70 °C送水/60 °C還水(室温20 °Cとの温度差ΔT = 45 K)とします。SHASE-S 101に基づく標準放熱量は、一般的な鋼製パネルラジエーター(タイプ21、高さ600 mm)で1セクション当たり約105 W(Δt = 45 K時)です。

居室別セクション数配分:

合計セクション数:6 + 3 + 4 + 3 + 2 + 2 + 1 = 21セクション。設置可能スペースに応じて、LDKは6セクション1台、各洋室は3〜4セクション1台ずつ、水周りは小型モデルを配置します。選定結果は hvaccalcpro 放熱器サイジング計算機 で検証できます。配管口径は各ラジエーターへの接続にR1/2(15A)、主配管にはR3/4(20A)を用います。

熱源機の選定:合計暖房負荷2,200 Wに給湯負荷(標準家庭で約24 kW)を加え、エコジョーズタイプのガス給湯暖房用熱源機(FF式、能力28 kW、効率95 %(IH熱効率))を選定します。これにより暖房と給湯を一台で賄い、省スペースかつ高効率なシステムを実現します。

4. ステップ3:ダクトサイジング(第一種換気システム)

本マンションでは高気密・高断熱化に対応するため、第一種熱交換換気システムを導入します。換気量は建築基準法第28条に基づき、住戸全体で0.5回/h以上を確保します。住戸容積80 m² × 2.5 m = 200 m³、必要換気量100 m³/h。これを給気側と排気側それぞれで確保します。

給気ダクトの設計:全体換気量100 m³/h、主ダクト設計風速3 m/s(住戸内は静穏性を重視し低風速設計)。必要断面積A = (100 ÷ 3,600) ÷ 3 = 0.0278 ÷ 3 = 0.0093 m²。円形ダクト直径D = √(4 × 0.0093 ÷ π) × 1,000 = √0.01184 × 1,000 ≈ 109 mm。施工性を考慮し、主ダクトはφ100 mmの塩ビダクト(VP管)を採用、実風速約3.5 m/s。

分岐ダクト:各居室への給気量はLDK 35 m³/h、洋室A 15 m³/h、洋室B 15 m³/h、洋室C 12 m³/h、その他23 m³/h。分岐ダクトはφ75 mm(LDK用)またはφ50 mm(洋室用)を使用し、各分岐に手動ダンパーを設置してバランス調整を可能にします。給気口はLDKの天井に1ヶ所(φ100接続)、各洋室に1ヶ所ずつ(φ75またはφ50接続)配置します。

ダクト圧力損失計算(最長経路):最長経路は熱交換換気ユニット→LDK給気口まで約12 m(直管相当長さにエルボ×2、分岐T字管×1を含め、換算長さ約18 m)。VP管φ100の摩擦係数λ = 0.025、風速3.5 m/sでの摩擦損失はΔP = 0.025 × (18/0.1) × (1.2 × 3.5²/2) = 0.025 × 180 × 7.35 ≈ 33 Pa。給気口グリルの抵抗約20 Paを含め、合計約53 Pa。同様に排気側も約45 Pa。熱交換換気ユニットの機外静圧は80 Pa(給排合計)以上を確保しており、余裕をもって設計を満たします。詳細な検証は hvaccalcpro ダクトサイジング計算機 をご利用ください。

5. 結果まとめ

下表に設計プロセスで得られた主要な入力値と計算結果をまとめます。

パラメータ 記号 数値 単位
専有面積 A 80
室外設計温度 Tout 0 °C
室内設計温度 Tin 20(居室) °C
外壁熱貫流率 Uwall 0.53 W/(m²·K)
窓熱貫流率 Uwin 1.8 W/(m²·K)
設計暖房負荷 Qtotal 2,200 W
単位面積当たり負荷 q 27.5 W/m²
ラジエーター出力/セクション 105 W/セクション
総セクション数 21 セクション
熱源機能力 28 kW
必要換気量 100 m³/h
主給気ダクト径 D 100 mm
主ダクト風速 v 3.5 m/s
給気側圧力損失 ΔP 53 Pa

6. 使用した計算機へのリンク

本設計事例で使用したhvaccalcpro.comの無料計算機は以下の通りです。各ツールはSHASE-S 101および建築基準法に準拠した計算ロジックを実装しています。

免責事項:本ケーススタディは教育目的のみの参考資料です。実際の空調設備設計は、必ず資格を有する空調設備技術者(建築設備士等)が行い、各自治体の条例や消防法に適合させる必要があります。