冷却塔の水量計算 — 補給水・蒸発量・排水を数式で算出
冷却塔の水量管理は、設備の安定稼働・水質管理・節水計画のすべての基礎です。本ガイドでは蒸発量(循環水量×1.5%×ΔT)の計算から始め、濃縮倍数(CoC)に基づく排水量・補給水量の算定、キャリーオーバー・風損の評価まで、冷却塔水量バランス計算の全体を実務数値とともに解説します。
1. 冷却塔の水量バランスの基本式
冷却塔の水量バランスは次の等式で表されます。
補給水量 M = 蒸発量 E + 排水量 B + 飛散損失 D + その他損失
定常状態では補給水量 = 損失合計が成立します。各成分の算定方法を以下に示します。
2. 蒸発量の計算
冷却塔の主要な除熱メカニズムは蒸発です。除熱量の70〜80%が蒸発潜熱によって賄われます。蒸発量Eは除熱量Qと蒸発潜熱L(25℃で約2,442 kJ/kg)から正確に求めます。
E(kg/s)= Q(kW)/ L(kJ/kg)= Q / 2,442
実用的な近似式として、冷却温度差ΔT(℃)と循環水量Wから以下の式が広く用いられます。
E(L/min)≈ W(L/min)× 0.015 × ΔT(℃)
| 循環水量(L/min) | 冷却温度差(℃) | 蒸発量(L/min) | 蒸発量(m³/h) |
|---|---|---|---|
| 500 | 5 | 37.5 | 2.25 |
| 1,000 | 5 | 75.0 | 4.50 |
| 2,000 | 5 | 150.0 | 9.00 |
| 1,000 | 7 | 105.0 | 6.30 |
| 3,000 | 5 | 225.0 | 13.50 |
3. 濃縮倍数(CoC)と排水量
蒸発によって水は失われても溶解成分は残るため、循環水が徐々に濃縮されます。この濃縮の程度を表す指標が濃縮倍数(CoC:Cycles of Concentration)です。
CoC = 循環水の電気伝導度 / 補給水の電気伝導度
排水量Bは目標CoCを維持するために必要な最小排水量で、次式で求めます。
B(L/min)= E / (CoC − 1)
| 目標CoC | E=75 L/minの場合の排水量(L/min) | 節水効果(CoC=2比較) |
|---|---|---|
| 2 | 75.0 | 基準 |
| 3 | 37.5 | 50%節水 |
| 4 | 25.0 | 67%節水 |
| 5 | 18.8 | 75%節水 |
| 6 | 15.0 | 80%節水 |
一般的な目標CoCは3〜5です。CoCを高くすれば節水効果は大きくなりますが、スケール(炭酸カルシウム・シリカ)や腐食リスクが高まるため、補給水の水質分析に基づいてLangelier指数やRyznar指数で評価した上で上限を設定します。
4. 飛散損失(キャリーオーバー・ドリフト)
冷却塔からは微細な水滴が気流に乗って飛散します(ドリフト損失)。現代の充填材型冷却塔では、ドリフトエリミネーター(飛散防止板)により飛散量を大幅に低減しています。
| 冷却塔タイプ | ドリフト率(循環水量比) |
|---|---|
| 旧型(スプレー式) | 0.5〜1.0% |
| 充填材型(標準エリミネーター) | 0.05〜0.2% |
| 充填材型(高効率エリミネーター) | 0.001〜0.005% |
レジオネラ菌対策が求められる用途では、高効率エリミネーター(ドリフト率0.001%以下)の採用が推奨されます(厚生労働省通知、ASHRAE Guideline 12-2020)。
5. 補給水量の総合計算例
条件:循環水量2,000 L/min、冷却温度差5℃、目標CoC = 4、充填材型(標準エリミネーター、ドリフト率0.1%)
- 蒸発量 E = 2,000 × 0.015 × 5 = 150 L/min
- 排水量 B = 150 ÷ (4−1) = 50 L/min
- ドリフト損失 D = 2,000 × 0.001 = 2 L/min
- 補給水量 M = 150 + 50 + 2 = 202 L/min(約12.1 m³/h)
年間稼働時間を3,000時間とすると、年間補給水量は約36,300 m³となります。東京都の水道料金(業務用約¥200/m³)で換算すると年間約726万円の水道コストになり、CoC管理による節水効果は大きいことがわかります。
6. 冷却塔容量(RT)の計算
冷却塔の選定容量は冷凍機の冷房能力とCOPから求めます。
冷却塔熱負荷(kW)= 冷房能力(kW)× (1 + 1/COP)
例:冷房能力350kW、COP = 5.5の場合、冷却塔熱負荷 = 350 × (1 + 1/5.5) = 350 × 1.182 = 413.6 kW。JIS規格の冷却塔RT(1RT = 3.9kW)換算では 413.6/3.9 ≈ 106 RT の冷却塔が必要です。
7. よくある設計ミス
ミス1:蒸発量を過小評価してポンプを小さく選ぶ — 補給水配管とポンプのサイズを蒸発量だけで計算し、排水量とドリフト損失を無視すると補給水不足になります。必ず3成分の合計で設計します。
ミス2:CoC管理なしの連続排水(垂れ流し) — 排水を常時一定量流して水質管理を省略すると、節水できず水道コストが2〜3倍になります。電気伝導度センサーによる自動CoC制御が省エネ・節水の両面で有効です。
ミス3:シーズンオフの滞留水を放置 — 使用停止時に水を抜かないと夏季の再起動時にレジオネラ菌が繁殖した状態で運転開始するリスクがあります。シーズン終了時には完全排水・清掃を行います。
8. FAQ
Q1: 冷却塔の蒸発量はどのくらいですか?
A1: 蒸発量は循環水量の約1.5%/℃の温度差分です。循環水量1,000L/min、冷却温度差5℃の場合、蒸発量は75 L/minとなります。
Q2: 濃縮倍数(CoC)とは何ですか?どう管理しますか?
A2: CoCは循環水中の溶解成分が補給水の何倍に濃縮されているかを示す指標です。一般的な管理目標はCoC = 3〜5で、電気伝導度センサーによる自動制御が一般的です。
Q3: 冷却塔の補給水量の計算式を教えてください。
A3: 補給水量 M = 蒸発量 E + 排水量 B(= E ÷ (CoC−1))+ ドリフト損失 D(循環水量×0.1〜0.2%)の合計です。
Q4: レジオネラ菌対策はどのようにすればよいですか?
A4: 定期的な高温洗浄または薬剤殺菌、定期清掃(年1〜2回)、シーズンオフの完全排水が基本です。厚生労働省の「レジオネラ症防止指針」に従った管理計画書の作成・運用が求められます。
Q5: 冷却塔の選定容量(RT)はどのように計算しますか?
A5: 冷却塔熱負荷 = 冷房能力 × (1 + 1/COP)で求め、JIS規格の1RT = 3.9kWで換算します。COP = 5.5、冷房能力350kWの場合、約106 RTの冷却塔が必要です。