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冷房負荷計算【SHASE-S 102】逐時法の手順と設計例

空調設備の正確な能力算定には、冷房負荷の逐時計算が不可欠です。本ガイドでは、SHASE-S 102「空調負荷計算法」に基づき、日射熱取得・内部発熱・外皮通過熱・外気負荷の4成分を時系列で積算し、最大冷房負荷の発生時刻と規模を正確に求める実務手順を解説します。東京・大阪の気象データを用いた設計例も併記します。

1. 冷房負荷の4大成分

冷房負荷Qtotal(kW)は以下の4成分の総和です。

Qtotal = Qsol + Qint + Qenv + QOA

SHASE-S 102では、これら4成分を1時間ごとに計算し、日積算で最大値となる時刻をシステム設計の基準とします。

2. 夏季設計外気条件(SHASE-S 102)

冷房負荷計算に用いる設計外気条件は、以下の標準値を使用します。

都市 乾球温度(℃) 湿球温度(℃) 絶対湿度(g/kg') エンタルピー(kJ/kg)
東京 32.0 28.0 23.1 91.5
大阪 34.0 28.0 22.8 93.7
名古屋 34.0 27.5 21.8 90.9
福岡 33.0 28.0 23.4 93.3
札幌 28.0 23.0 16.0 69.0
那覇 32.0 29.0 26.5 99.7

出典:SHASE-S 102・気象データ(拡張アメダス気象データ EA Weather 2010年版)

3. 日射熱取得の計算

窓面からの日射熱取得Qsol,win(W)は次式で求めます。

Qsol,win = Aw × IT × SC × CF

ここでAwは窓面積(m²)、ITは傾斜面全日射量(W/m²)、SCは日射遮蔽係数、CFは方位・ガラス種別に応じた補正係数です。

ガラス種別 SC(遮蔽なし) SC(内側ブラインド) SC(外側ルーバー)
単板ガラス(3mm) 1.00 0.68 0.30
複層ガラス(6A) 0.82 0.56 0.25
Low-E複層(高断熱) 0.38 0.28 0.15
Low-E複層(遮熱型) 0.25 0.19 0.10

出典:SHASE-S 102 付表、ガラスメーカー(旭硝子・日本板硝子)カタログ値

4. 内部発熱の算定

内部発熱Qintは、人体・照明・OA機器・その他機器の発熱の合計です。SHASE-S 102の標準値を以下に示します。

発熱源 顕熱(W/人 or W/m²) 潜熱(W/人 or W/m²) 単位
人体(事務作業) 65 55 W/人
人体(軽作業) 75 75 W/人
LED照明(オフィス) 10〜15 0 W/m²
OA機器(PC+モニター) 15〜25 0 W/m²
サーバー室 500〜1500 0 W/m²

在室率・照明点灯スケジュールは時刻別に変動するため、逐時計算では8時〜20時の発熱スケジュールを作成し、各時刻の発熱量を積算します。

5. 外皮通過熱と蓄熱効果

外壁・屋根の熱貫流は構造体の熱容量による蓄熱効果(相当外気温度法)で計算します。

Qenv(t)= U × A × ΔTeq(t)

相当外気温度ΔTeqは、実外気温度に日射吸収分を加算したものです。RC造(重量)の外壁では最大熱取得の発現が4〜8時間遅れ、軽量鉄骨造では1〜3時間の遅れとなります。この遅延を無視すると冷房負荷の最大値を誤って計算することになります。

6. 東京オフィスビルの設計例

条件:東京、事務所用途、延床面積1,000m²(1フロア)、南向き主ファサード、窓壁比30%、RC造、LED照明15W/m²、在室密度10m²/人

負荷成分 最大値(kW) 発生時刻 全体に占める割合
日射熱取得(南窓) 42 12:00〜13:00 22%
内部発熱(人体+照明+OA) 85 13:00〜15:00 45%
外皮通過熱(外壁+屋根) 18 15:00〜16:00 9%
外気負荷(顕熱+潜熱) 45 13:00〜15:00 24%
合計(最大冷房負荷) 190 14:00〜15:00 100%

この例では、内部発熱(45%)が最大の冷房負荷成分であり、次いで外気負荷(24%)、日射熱取得(22%)の順となっています。建物の高気密化・高断熱化が進んだ現代のオフィスビルでは、内部発熱の管理(人体密度・照明制御・OA機器の省エネ化)が冷房設備の最適化に直結します。

7. よくある計算ミス

ミス1:蓄熱効果を無視する — RC造の外壁で蓄熱を無視すると、最大負荷を3〜5時間早く見積もり、実際の最大値より10〜20%小さい計算結果になることがあります。

ミス2:窓面積の計算単位を誤る — 建物図面の窓面積(枠を含む開口部面積)とガラス有効面積は異なります。日射熱取得には有効ガラス面積(開口部面積の85〜90%)を用います。

ミス3:在室率・照明スケジュールを一定とする — 逐時計算では時刻別の在室率・照明点灯率を設定します。平均値のみで計算すると昼間ピーク時の過小評価につながります。

ミス4:外気量の設定を忘れる — 建築基準法上の最低換気量(0.5回/h)と、ASHRAE 62.1/SHASE基準のCO₂管理値では外気量が大きく異なります。省エネ計算でも空気質計算でも、外気量の根拠を明確にすることが重要です。

8. FAQ

Q1: 冷房負荷の最大値はどの時刻に発生しますか?
A1: 建物の向きや用途によって異なりますが、一般的なオフィスビルでは14〜16時頃に最大冷房負荷が発生します。西向きファサードでは15〜17時に日射熱が最大となります。逐時計算ではすべての時刻の負荷を計算し、その最大値を設計基準とします。

Q2: 蓄熱効果(SHGCと取得熱の遅延)とはどういう意味ですか?
A2: 外壁や床スラブなどの熱容量の大きい構造体は、外部からの熱を一時的に蓄積し、時間遅れを伴って室内に放熱します。RC造では熱の室内侵入が4〜8時間遅れ、軽量構造では1〜3時間の遅れとなります。適切な蓄熱計算なしに最大負荷を過大評価すると、機器の過大選定につながります。

Q3: 人体・照明・OA機器の発熱量はどのくらいですか?
A3: SHASE-S 102の標準値として、人体(事務作業)は顕熱65W/人・潜熱55W/人(計120W/人)、照明はLED化済みオフィスで10〜15W/m²、OA機器は15〜25W/m²が一般的な設計値です。内部発生熱が冷房負荷全体の40〜60%を占めることも珍しくありません。

Q4: 外気負荷はどのように計算しますか?
A4: 外気負荷は換気量と外気・室内の空気エンタルピー差から計算します。Q_OA(kW)= G(kg/s)×(h_OA − h_RA)で求めます。東京夏季では外気の顕熱・潜熱双方が大きく、全熱負荷の20〜40%を外気負荷が占めることがあります。

Q5: 窓面積比(窓壁比)が冷房負荷に与える影響はどれくらいですか?
A5: 窓壁比(WWR)が10%増加するごとに、南向き面では冷房負荷が約8〜12%増加します(東京基準、Low-E複層ガラス想定)。外遮蔽(ルーバー・オーニング)は内遮蔽に比べ日射遮蔽効果が2〜3倍高く、SHASE-S 102では日射遮蔽係数SCで定量的に評価します。

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